

たこと言って、思い浮かべるのは8本の腕を持つシルエットですが、世界に約200種類もおり、日本だけでも50種以上が生息しています。欧米では昔から「devil
fish(デビルフィッシュ)」と呼ばれ、「悪魔の魚」として嫌われていましたが、近年では寿司やたこ焼きなどの日本食ブームでたこの美味しさが認知され、世界中で食べられるようになりました。たこは軟体動物門頭足綱八腕形目に属しますが、たこは漢字で「蛸」ですが、魚偏ではなく虫偏ということは、もともとは「蛸」はクモ(蜘蛛)を指す漢字でしたが、「海に住むクモ」の意味で「海蛸子」となり、現在の「蛸(たこ)」と呼ばれるようになりました。中でも主に食べられて存在が知られているのはマダコを始めにミズダコ、イイダコ、ヤナギダコ、テナガダコの5種類です。日本では「明石だこ」が有名ですが、昭和38年の冷害による海水の異常低温で明石だこは死滅しており、熊本県天草地域からたこを10トンほど明石に送り、放流されて現在に至っています。明石だこのルーツは「天草だこ」なのです。
たこは岩礁帯や藻場、砂地では穴を掘って生息し、海底を這うように泳ぎますが、擬態や岩の間に身を隠して過ごします。昼間はあまり動かず夜行性ですが、目の前に大好物の甲殻類がいると、昼夜問わず8本の腕を器用に使い、その吸盤で狙った獲物は逃しません。たこは空腹になると共食いをしたり、自分の腕を食べたりと狂暴な面があり、養殖が困難とされており、現在でも研究途上です。世界でも人気な食材にもかかわらず、漁獲量は年々減少傾向で取引価格も高騰しています。
新鮮なたこは魚の選び方と同じで、目が透明で澄んでいるものが良く、濁ってくすんでいるもの、白っぽいものは鮮度が落ちています。身は弾力があり、腕が太いもの、吸盤が指に吸い付くかを確認してください。たこはぬめりがありますが、体表が乾いていたり、ぬめりが強すぎたりするものは避けるようにしましょう。たこのオスとメスで違いがあり、腕の吸盤の大きさが均等か、そうでないかで判断が出来ます。均等なものはメス、まばらなものはオスとなります。メスはオスに比べて柔らかく、オスは固いとされていますが、料理や好みに合わせて選ぶと良いです。
たこはボイルされているものを購入すれば調理は簡単ですが、生たこの美味しさには敵いません。ボウルに入れて塩でタコを揉み洗いし、吸盤の汚れも丁寧に取り除いてください。ぬめりが取れて泡立ってきたら、水でしっかり洗い流しましょう。一度ではぬめりが取れないこともあるので、何度か繰り返し、たこの表面がスベスベしたら大丈夫です。沸騰した湯に塩を入れ、足が丸まってくるので様子を見ながら茹でてください。約500gのたこに対して大さじ1程度の塩分量です。刺身やカルパッチョなど生食はもちろん、タコステーキやおでんといった煮物、焼いても揚げても、その食感や美味しさでどんな料理にも合います。最近では「たこ焼き」が有名になり、世界中の人々から愛されています。皆さんのお好みの料理で楽しんでください。
たこは美味しさもさることながら、低カロリーで低糖質、高たんぱくで身体に良い栄養素が豊富に含まれています。特にビタミンの中でも血液や神経を健康に保つビタミンB12や抗酸化作用のあるビタミンEのほかに代謝を促進し、脳神経の働きを活性化するナイアシンが豊富に含まれています。肝機能を高め、疲労回復で知られている「タウリン」の宝庫でもあります。加熱すると溶け出しやすくなるので、生で食べることもオススメします。栄養価は高いのですが、プリン体の含有率が多めでもあるので、健康に良いからといって食べ過ぎには気を付けましょう。
国内のたこの水揚げ量は年々減少しており、また、世界的にたこを好んで食べるようになってきている傾向があるため、特に国産のたこを気軽な価格で手に入れることが難しい時代になってきています。今年の気候はこれまでのところは穏やかな状態が続いている為、質の良いたこが出回っていますが、やはり価格は高止まりしている状態と予測しています。スーパーなどで国産のたこを見つけたら、刺身などその質の良さを満喫できる食べ方をオススメします。
日本で主に食べられているたこの種類は、マダコ、ミズダコ、イイダコ。最も食べられているのはマダコ。春に旬を迎えるのはイイダコです。水揚げ量が日本一の北海道では、水揚げの約70%がミズダコで、5~10月が旬になります。北海道や、東北太平洋側、また日本海側でも海水温が高い状態が続いており、この先1ヶ月も平年よりかなり高いでしょう。低温に弱いマダコにとって良い状態と言えます。
年末は強い寒気の影響で、気温が低くなっていましたが、1月以降は気温の高い状態が続きました。また下層の暖水の影響もあり、名産地の海水温は引き続き高い状態が続いています。それでも特産地で一年中水揚げされているミズダコは適水温になっています。また、青森や宮城では寒さに弱いマダコの生存に問題のない水温になっています。
名産地近海では、下層の暖水の影響で、引き続き広い範囲で海面水温が平年より高く、平年よりかなり高い海域もみられます。平年より高い海水温が続いていますが、たこには問題のない海水温となっています。青森や宮城では低温に弱いマダコの生存水温を上回っており、マダコにもミズダコにも問題ない温度です。北海道近海の水温はマダコには低すぎますが、道内の漁獲量の7割を占めるミズダコにとっては適水温となっています。
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