牡蠣は古来より人類が食用にしてきた歴史のある食材です。日本でも歴史は古く、縄文時代の貝塚から牡蠣の化石が発掘されています。ナポレオンやビスマルクが牡蠣の愛好家であったことは有名な話です。その時代にローマでは、すでに牡蠣の養殖が行われていました。牡蠣は海の岩から「かきおとす」ことからその名前が付けられ、名前の通り、岩や他の貝の殻など硬質の基盤に着生しています。その性質を利用して牡蠣の養殖は行われています。流通している牡蠣のほとんどは養殖です。養殖量は広島県、宮城県、岡山県がトップ3。広島県が全体の約6割を占めています。
殻付きの場合は傷が少なく全体的に丸い形で殻が固く閉じているものを選びましょう。大きさに比べて重いものを選ぶと、身がしっかり詰まっています。剥き身の場合はふっくらとしていてツヤがあり貝柱が半透明なものを。黒い縁のびらびらとした薄い膜が盛り上がったように縮んでいるものがおすすめです。
一般的に販売されている牡蠣は、「生食用」と「加熱用」に区別されていますが、これは鮮度で区別されているのではありません。食品衛生法に基づき、微生物に関する成分規格、摂取する海域や加工処理の衛生要件に関する加工基準、保存温度等の保存基準などが定められており、これらの規格基準に適合したものだけが「生食用」として市場に流通します。
「海のミルク」といわれるほど牡蠣にはたんぱく質、脂質、糖質、ビタミン類、ミネラルがバランスよく含まれています。コレステロール値低下の効果が期待できるタウリン、貧血予防になる鉄分、その働きを助ける銅をはじめ、旨み成分のエネルギー源にもなるグリコーゲンも豊富です。鉄分は8個ほどで1日の必要量の半分を補えます。
今年の夏の猛暑の影響もあり、出荷時期が全国的に1ヶ月程度の遅れが生じているとの声が上がっていますが、生育自体には問題はなく、例年通りの身がふっくらとしたミルキーな牡蠣が出荷されているようです。日本の冬の風物詩でもある牡蠣を食べて、2023年の最後を締めくくってはいかがでしょうか?
今年の北半球は、観測史上最も暑い夏となりました。日本でも1898年の統計開始以降、最も暑い夏となり、9月も記録的な暑さが続きました。牡蠣の成貝期の適水温は15~25℃と言われていますが、猛暑の影響で海水温は平年より高く、牡蠣の適水温を超える時期がありました。
雨は、牡蠣の餌になる植物プランクトンを山から海へ運ぶ働きをしています。そのため降水量が少ない年は生育が悪くなります。広島・岡山は夏の降水量が少なかったため、かきの生育に影響が出ていたようです。シーズン初めは身が小ぶりになったり、水揚げ時期の遅れなどの影響が出たところもありました。今後は牡蠣の生育に適した海水温が続き、降水量も平年並~平年より多めの予想なので、大きな身に成長した美味しい牡蠣に期待できそうです。
牡蠣の餌となる植物プランクトンの量を示すクロロフィル量は日照時間と相関があり、日照時間が少ないと植物プランクトンの量が減少し、牡蠣の見入り(殻の大きさに対するむき身の大きさ)が小さくなります。今シーズンは、日照時間に問題はないようです。
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