秋を代表する旬の味覚の「サンマ」と聞いて、「秋刀魚」という漢字を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。「秋に獲れる刀のような形をした魚」とのイメージですが、あくまでも当て字であって、本当の名前の由来について、有力な説が2つあります。「細長い魚」を意味する「サマナ(狭真魚)」が訛って「サンマ」と変化したとする説があります。もう1つは、大きな群れで泳ぐ習性を持つことから「大きな群れ」を意味する「サワ(沢)」と「魚」を意味する「マ」の「沢魚(サワンマ)」が語源となったとも言われます。実は「秋刀魚」という漢字表記の登場は遅く、1922年(大正10年)の佐藤春夫の『秋刀魚の歌』がきっかけで広まったとされています。
ダツ目サンマ科に属し、日本の沖合からアメリカ沖まで、北太平洋に広く分布する魚です。分類上はサヨリやトビウオなどの仲間でもあります。日本近海で漁獲されるさんまは、夏場にオホーツク海を回遊し、秋に産卵のために寒流に乗って南下します。さんまは魚の習性に合わせた棒受け網という、さんま特有の捕まえ方をします。
新鮮なさんまは皮がピンと張り、体表の銀色が輝き、背の青味が美しいものが良いとされます。頭から背中にかけて盛り上がり、全体的にふっくらとして張りがあります。特に持ち上げた際にヘナッとせず、その名の通り、刀を思わせるように身が固く引き締まったものを選んでください。口先と尾の付け根の黄色みが強いものほど脂が乗っています。目が充血していたり、濁っていないかどうか確認し、腹部から緩くなった内臓が染み出してドリップになっているものは避けてください。
落語「目黒のサンマ」でも有名ですが、シンプルに塩をまとわせて、七厘と炭火で煙をモクモクと出して焼き上げた塩焼きは絶品です。もちろん、生姜を添えた刺身でも、押し寿司のように酢〆にしても美味しく食べられます。みりん干しや缶詰の蒲焼きも有名ですが、どの料理にでも当てはまる変幻自在な魚です。最近は冷凍技術の向上により、旬の時期でなくても旬の時期に漁獲したさんまが店頭に並んでいることが多くなりました。
さんまは晩秋にもっとも脂が乗り美味しくとなります。昔から食卓にさんまが登場する季節になると、夏ばてや肩凝り、腰痛が治って人々が健康になることから、「さんまが出ると按摩が引っ込む」という、ことわざがあるほど栄養価が非常に高い魚です。血液をサラサラにして、コレステロールを下げ、アルツハイマーの予防にもなるEPAやDHAを豊富に含み、必須アミノ酸や鉄分、ビタミンAやビタミンDも多く、血合いのビタミン12はレバー並みと言われ、栄養価が抜群に高い魚です。
近年は海面温度の上昇による海流の変化によってさんまが近海で取れなくなり、さんまの不漁が伝えられてきましたが、一転して今年は各地で豊漁の吉報が上がってきており、久しく購入を控えていた方々には嬉しいニュースです。前年度に比べてサイズも大きく、また、手軽な値段でスーパーなどに並ぶようになってきました。秋の季節を感じる代表的な味を、今年は楽しめる機会が増えそうですね。
9月までは周期変化。晴れる日が多く、気温も高め。海水温は高い状態が続きますが、10月以降は低気圧通過後に一時的に冬型の気圧配置となります。太平洋側ほど晴れるでしょう。気温は10月まで高めで、11月は平年並~高めの予想となっています。さんまの漁場である北海道南東方~三陸沖では、過去半年の間、十分な日照と気温が高い状態が続いた上、下層の暖水の影響もあり、海面水温が高い状態が続いています。海水温が高い海域を南下するほどさんまはスリムになっていくので、脂が乗ったさんまはこれから初秋までが狙い目となりそうです。
特産地はいずれも平年より気温が高く、日照時間が多い時期が続いた上、下層の暖水の影響もあり、海面水温の高い状態が続いています。今後、本州東方の一部で海水温が平年並になるところもありますが、名産地近海は9月も海水温が平年より高い状態が続く見込みです。
さんまの適水温は10~22℃。名産地近海は平年より3℃程度、海水温が高い状態。北海道沖はさんまの適水温となっていますが、岩手~宮城県沖の海水温は20~23℃あり、さんまの適水温より高めとなっています。8月は台風5号、台風7号の強風による海面水温の低下で、平年よりかなり高い海域は縮小しましたが、下層の暖水の影響で引き続き広範囲で平年よりかなり高い状態となっています。それでも北海道近海の海水温はさんまの適水温の範囲内ですが、三陸沖では低水温より高めとなっています。
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